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新たな工事への果敢な挑戦で若手技術者の育成にもつなげる

横浜美術館改修工事(非常用自家発電設備更新工事)

公共施設向け設備工事
社会インフラ事業部

    現場での据付方法まで見据えて発電機システムを設計

  • 社会インフラ事業部

    社会インフラ事業部

    社会インフラ建設部
    技術設計担当

非常用自家発電システムには、停電時に確実に始動して電力を供給することが、何よりも求められます。停電により施設への電力供給が止まると、送電がストップしたという信号が、別の部屋にある受電設備から非常用自家発電システム側に送られてきます。その信号を自動始動盤が検知して、発電機を始動させるという仕組みです。ここで作られた電気は受電設備に送られて、そこから全館に供給されていきます。今回、横浜美術館に設置される非常用自家発電システムは、発電機の回転子をディーゼルエンジンで回して発電します。エンジン自体はA重油を燃料として動くもので、エンジンメーカーが製作。発電機、エンジン、自動始動盤・発電機盤がセットでシステムを構成しています。今回の機種では、美術館で使用する電力の3分の1相当を供給できる750kVAの容量を有しています。発電機とエンジンは、横浜市側からの仕様を検討し、既設のシステムでも使われていた東芝製の発電機とヤンマー製のエンジンの組み合わせを選定しました。

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「私は発電システムの技術面全般を見るコーディネーター的なポジションを担うとともに、仕様や設置する環境に合わせて、システム構成や機器の配置などの基本設計を行っています。又、各機器を製造する工場側へ横浜市の要求事項をインプットする役割もあります。今回は、設置場所が美術館なので、発電時に出るエンジン音を抑えるため、エンジンの消音器の性能を上げるなどの要求事項がありました。その基本設計・インプットした要求事項をベースに、発電機やエンジンの詳細設計は工場の設計者が行います」。
今回のようなリニューアル工事で問題になるのが、大きな設備や機器をどうやって設置場所まで搬入するかという点です。装置自体がお客様の仕様を満たしていても、それを現場に設置できなければ意味がありません。そのため、入札前には通路や搬入扉の寸法、設置場所の床の耐荷重などを確認する必要がありました。
「通常であれば、発電機とエンジンを工場で組み上げてから現地に搬入するのが一般的です。ところが今回は搬入する通路や部屋の入口が狭かったために、一体化した状態では室内まで運ぶことができませんでした。そこで、発電機とエンジンを分割して搬入する工法を取りました。また、システムを制御する自動始動盤・発電機盤も立てた状態では入口を通らないため、横倒しにて搬入できるようにしました。そうした問題点を事前に発見して対応策を考えられる手腕が、エンジニアには求められるところです」。
受注後には基本設計に沿って、東芝の工場とエンジンメーカーが機器の製造を開始。同時に工事を管理する現場代理人とも密なコミュニケーションを取りながら、業務を進めていくことが非常に重要になってきます。

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「たとえば今回のプロジェクトでは、発電機とエンジンを分割し、盤を横倒しして現地に搬入するのが施工上の大きなポイントです。そこで現場代理人と一緒に工場に赴いて、システムの工場出荷前試験に参加し、機器類をどのような状態で現地に運び込むのかを事前に事細かに確認しています。今回、若手メンバーが現場代理人に抜擢されているので、自分が伝えられることはすべて伝え、経験を積んでほしいと考えています」。
工事現場で開催される毎週1回の定例会議に出席して、その後などに他設備施工業者と確認しながら仕様を詰めていきます。今回の案件では工事が設備ごとに分割発注されているので、非常用自家発電システムに関係する受電設備や中央監視制御装置、消火設備などの施工業者との間で、個別に調整が必要になってきますが、コミュニケーションを万全にすれば現場はうまくいくと話します。

「どの段階で誰と打ち合わせをして調整する必要があるのかを、事前に予測して優先順位をつけながら先手を打って動いていくのが大切で、その点を怠ると工事をスムーズに行うことができません。予測には工事や現場に関する経験がどうしても必要です」。
打ち合わせの場面には必ず現場代理人と一緒に動き、誰とどんな話をしたのかを一つひとつ確認しながら内容を共有しています。また、他の設備との間でやりとりする電気的な信号の確認にも、相手の仕様を引き出すためには、どのような質問をすればいいのかコツがあります。そうした電気的な回路の確認の仕方などを現場代理人に対してレクチャーしていきました。
「誰から何を聞き出すのか。とくにどのような言い方をすれば、相手の考えを引き出せるか。その点では技術知識だけではなく、コミュニケーションを取る能力が重要だと考えています。私自身はもともと話すのが得意ではありませんでしたが、会社の先輩からそのうち得意になると励まされながら経験を積み、実際にコミュニケーションスキルが上達しました」。

こうして事前の準備に手を尽くした上で、搬入は現場代理人にバトンタッチしました。
「当日は事前に計画した通りの段取りで無事に搬入し、とにかく安心しました。しかも発電機とエンジンを組み上げる際に、現場代理人が手順に従って的確に指示を出すことができたのが、何よりうれしかったですね。今後は試験が大きなイベントになります。発電機の製作を手がけた者にとっては、無事に稼働させることが何より重要で、まさにこれからが本番だと言えます。他の業者との間でも確認試験を行ったりするタイミングを調整しながら、工程をまとめて効率よくスケジュール通りに実施していきます。電気設備工事の醍醐味は、やはり完成して現場でスイッチを入れる瞬間。自分が思った通りに機器が稼働し始める瞬間は、何とも言えない気持ちになります。今回もその瞬間を待ち遠しく思っています」。

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  • このコンテンツは、2022年に取材・製作しました。

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