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産業分野のプロフェッショナル集団

プラントを「完成」させるラストマンたち

産業システム事業部
現地試験・試運転・調整業務<

    絶対に停められない電力システムを検証する

  • 産業システム事業部

    産業システム事業部

    系統・変電フィールドサービス部
    系統制御グループ
    中央給電指令所システム(系統・変電)担当

全国の電力会社には、それぞれの発電所から変電所、送配電設備といった電力系統を監視する中央給電指令所があります。その中枢を担う重要なシステムが、中央給電指令所自動給電システム(以下・中給システム)と呼ばれるもので、電力の需給と送配電を監視しています。電力会社では50ヘルツ/60ヘルツの周波数を安定的に保って送電を行っていますが、電気を利用するユーザー側の需要量に対して、発電側の供給量が多すぎたり少なすぎたりするとこの周波数が変化し、電気の供給に悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、周波数の変化を監視し、地域に最適な電力を安定して供給できるように発電量をコントロールするのが、中給システムの大きな役割です。中央給電指令所の監視盤には、電力会社が管理するすべての発電所の状況がリアルタイムで表示され、多数のモニターに監視員が目を光らせています。まさに電力供給の要となるこの中給システムが正常に稼働しなければ、最悪の場合には電力会社が電気を供給するエリアで系統崩壊が起こり、大規模停電が発生しかねません。

「システムを最新の状態に保ってトラブルを防ぐために、中給システムは定期的にリプレースが行われます。私たちが担当するのは、リプレースに伴うシステムや監視盤の試験・試運転調整業務です。事前にどのような試験を行うべきかを時間をかけて全てのリスクを洗い出し、綿密な計画を立案して中給システムが絶対に停められない様、試験・試運転調整業務に臨みます」。 工場で製作された監視盤などの設備機器を、現地に据え付ける工事の段階から現場に入り、まずは装置や周辺機器の過不足を確認。電源を立ち上げて電気がきちんと供給されているか、各種ケーブル類を一本一本確かめて接続をチェックします。さらにシステムの心臓部となるコンピュータ、制御ソフトなどをすべてセットアップして試験も行います。一連の試験は事前に工場でも行いますが、現地で再度ケーブル等の繋ぎ変えなどをしているので、他のさまざまなシステムとの連携接続やオンオフのスイッチ、アラームといったインターフェイスもしっかりと確認することも重要です。

作業員写真

現地で細心の注意を要するのが、最大の難関である新旧システムの切り替えです。本番に備えて、半年以上前から切り替えの手順書を作成し、何度も打ち合わせを行います。さらに事前リハーサルでは実際に当日作業を行うメンバーを集めて、各メンバーの動作や操作手順を一つひとつ確認していきます。失敗は許されないので、不具合がないように万全の準備で臨まなければなりません。そして、切り替え当日には、新旧システムを同時に走らせながら、システムに表示されるデータや数値が実際のものと合致しているかどうかをチェックし、合致して初めて切り替えを行います。切り替えに失敗すれば大停電が発生し、社会生活に多大な悪影響が広がるため、緊張感があります。それだけに、無事試験を終えて切り替えが成功したときの達成感はひとしおです。
「成功した瞬間は“やっと終わった!”と、ほっとしますが、実際に運用が始まって問題なく稼働しているのが確認されるまでは、やはり気が抜けません。その後も、“もっとこうしたほうがいい”といったブラッシュアップするための提案を行っていきます。動き出せば終わりではなく、先を見てさまざまな対応を行っていくのも私たちの重要な業務です」。

中給システムの試験・試運転調整業務はハードからソフトまで、また電気工事に関する幅広い知識を要する仕事です。これに携わった知識や経験をベースに、電気工事施工管理技士1級という資格を取得することができました。電気工事関連の国家資格の中でも必須に当たるもので、知識だけではなく実務経験も必要です。
「筆記試験では、中給システムを担当して得た知見をベースに作成したレポートで、合格することができました。社内の講習を受けたり、いろいろなアドバイスを受けたことも功を奏しました」。
政府や各電力会社が節電を呼びかけている昨今、各電力会社では、その日の電力需要を予測する「でんき予報」を毎日発表しています。「でんき予報」の大元となるデータも、中給システムから提供されています。また発電量に余裕がある電力会社から、電力がひっ迫している電力会社に対して電気を融通するケースもあり、また最近では、メガソーラーなどから買い付ける電気の量も大きく増加してきました。そこで売買される発電量を正確に集計しなければ、電力会社の経営にも関わってきます。ここでも中給システムが活躍し、その重要性は日増しに高まっています。
「電気という絶対に止められないインフラを護るために、製品づくりからシステム設計、そして私たち試験・試運転調整業務まで、東芝プラントシステムでは皆で一つの目標に向かっています。お客様とも電気を安定して供給するという同じ目的を共有しながら、その一員として頑張れることを大きな誇りに思っています」。

中給システムイメージ写真
  • このコンテンツは、2023年に取材・製作しました。

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